ピルとは
ピルとは「経口避妊薬」のことです。
ピルと呼ばれているものは、以前は中容量ピルでしたが、現在ピルは婦人科のクリニックでは低用量ピル、超低用量ピルの「OC(オーシー)」「LEP(レップ)」が一般的です。
- OC(Oral Contraceptives)は「低用量経口避妊薬」です。コンドームは正しく使用した場合でも約3%の失敗率がありますがOCは正しく服用すれば、ほぼ100%に近い避妊効果と言われています。
OCは避妊の他に月経痛、生理周期のコントロール、卵巣がん、子宮体がんの発症率の低下などの副効用があります。
OCは保険適用にはならず、「自費診療」になるため、医療機関によって料金設定は異なります。 - LEP(Low dose Estrogen Progestin)は「低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬」です。OCと基本的には同じ成分の薬剤ですが、PMS(月経前症候群)や月経困難症、子宮内膜症の治療薬としてOCとは使用方法が異なります。
月経困難症や子宮内膜症の治療として使用する場合は「保険適用」となりますが検査が必要です。
ピル外来とは
- 当院では、計画的に避妊を行いたい、無防備なセックスによって避妊ができなかった、月経痛などを改善させたい、大事なイベントがあるので月経を早めたい、あるいは遅らせたい(月経移動)と希望する方などを対象に医師がピルを処方いたします。これらに使用するピルとしては、低用量ピル(低用量経口避妊薬、OC)、中容量ピル、モーニングアフターピル(緊急避妊ピル)がありますが、いずれも対応可能です。
- なおピルを希望したとしても、以下に該当する方には処方いたしません。 喫煙している方(35歳以上で1日15本以上) 不正出血がみられ、がんの可能性が否定できない方 エストロゲン依存性腫瘍、血栓性素因、冠動脈疾患、高血圧、肝障害がみられる方 何の前触れもない片頭痛のある方 など
超低用量ピルとは
- 超低用量ピル(LEP)は、低用量ピルと同じくエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類のホルモンによる合剤ですが、低用量ピルよりもエストロゲンの含有量が少ない(30μg未満)のが特徴です。
- これは避妊効果を目的に使用するというよりは、月経困難症や月経前症候群といった症状を改善させることで使用することが大半です。そのため、この薬を医師から処方される場合は保険が適用されます。
- 同薬も低用量ピルと同様に1日1錠を決められた時間に服用していくことで、月経による排卵や子宮内膜が厚くなるといった現象を抑えるようになるわけですが、これによってプロスタグランジンなどの痛みの物質の過剰な産生も抑えられていくので、月経が原因の痛みや精神的な症状(イライラや不安感 など)が軽減されることが期待できるようになります。また副効用として、卵巣がん、子宮体がん、大腸がんのがん予防、あるいは発症リスクを低減させるといった効果があることも報告されています。
- なお、超低用量ピルを服用することで、飲み始めて間もない時期(1~2週間程度)は吐き気、少量の不正性器出血、頭痛などの症状が現れることがあります。このほかにも血栓症や心筋梗塞を発症させるリスクを高めることもあります。
低用量ピルとは
- 主に避妊することを目的とした薬剤で、プロゲステロンとエストロゲンの2つの女性ホルモンが含まれた配合剤になります。ピルに含まれるとされるホルモンの量が少ないことから低用量ピルと呼ばれるようになりました。これまでのピルはホルモンが含まれる量が多過ぎて血栓症などの副作用もみられましたが、避妊効果を維持しながらもその含有量を減らした低用量ピルが登場することで、そのようなリスクの可能性は減っていきました。
- 服用方法は毎日1錠で、正しく用いることができれば避妊効果はほぼ100%と言われています。飲み続けることで排卵は抑制され、それによって受精卵は着床しづらくなって、妊娠しにくい状態となります。ただ、性病を抑えられるわけではないので、性行為の際は避妊具(コンドーム)なども併用するようにしてください。
- また低用量ピルに含まれる、プロゲステロンとエストロゲンの作用というのは、避妊以外の利点もあるとされることから、避妊目的以外で使用されることもあります。具体的には、月経困難症や月経前症候群、子宮内膜症で起きるとされる症状の緩和や改善、卵巣がんや子宮体がんの発症リスクを下げるといった効果が期待できます。これらで使用したいという場合もお気軽にご相談ください。
- なお低用量ピルの服用による副作用ですが、飲み始めて1~2週間程度は吐き気や少量の不正性器出血がみられることがあるほか、血栓症や心筋梗塞を発症させるリスクを高めるようにもなります。
中容量ピルとは
- 低用量ピルが認可されるまで、よく出回っていたのが中容量ピルでした。低用量ピルとの違いは、ホルモンの配合量で(中容量ピルの方が)エストロゲンの量が多いと言われています。避妊目的で使われることもありますが、最近は月経をずらす際(月経移動)にもよく用いられます(低用量ピルでも可能です)。
- ずらすとは、次回の月経を早める、もしくは遅くさせるということになります。これによって、計画した旅行や結婚などのイベント、大切な受験、スポーツの試合の日などに月経を気にすることなく、好きなことや大事なことに集中することができるようになります。
- 月経を早めたい場合は、月経が始まってから5日目までにピルを服用する必要があります。その後は早めたい日まで1日1錠を飲み続けていき、服用をやめてから2~3日後に通常よりも少ない量の月経がみられます。この場合、月経を避けたい日にピルを服用する必要はありませんが、ずらしたい月経のひとつ前の月経が来る前に当院にて一度ご相談ください。
- 月経を遅らせる場合は、月経が始まりそうな日の5日ほど前からピルを飲み始めていき、月経を避けたい日まで1日1錠服用していきます。服用中に月経は来ません。なお服用を止めると2~3日で生理が来ます。ちなみに移動可能な期間は、長くても10日間ほどになります。
副作用について
服用によって現れるとされる症状は、低用量ピルと同じように吐き気や頭痛、血栓症のリスクが高くなるといったものですが、配合量(エストロゲン)が多いことで、低用量ピルよりも症状が強く出ることがあります。そのため安全性を考慮して、月経移動でも低用量ピルが用いられるようになっています。
アフターピルとは
- 無防備なセックスをした、あるいは避妊に失敗したという場合に用いられるのがアフターピルです。この場合、避妊に失敗した性交をしてから72時間以内にアフターピル(レボノルゲストレル:ノルレボ錠)を1回服用する必要があります。
- ただ正しく服用したとしても妊娠阻止率は84%程度で100%ということはなく、約2%のケースで妊娠を防止できなかったケースもあるという報告もあります。つまり、低用量ピルを避妊目的で継続的に使用している場合と比べると妊娠率はかなり高いと言えます。
- また妊娠が阻止できたかどうかにつきましては、服用後にすぐ判明することはありません。次の月経が始まったことで確認できるようになります。したがって、予定月経よりも1週間以上経過したという場合は、一度ご受診されるようにしてください。
副作用について
- なお副作用に関してですが、これまでに頭痛、吐き気、不正出血、倦怠感などの症状が報告されていますが、重篤な症状に関しては現時点ではありません。また低用量ピルのようなエストロゲンの成分は含まれていませんので血栓症の発症リスクもありません。
- ちなみにノルレボ錠を服用したものの妊娠してしまい、その後に出産したという場合ですが、これまでに胎児が何らかの悪影響を受けたという報告はありません。